子どもの性暴力被害
18歳未満であれば、子どもへの性暴力被害として考えます。
プライベートゾーン
身体は、その人だけの大切なもの。水着の部分(オレンジ色)と口は、人のプライベートゾーンです。あなたの同意なくさわらせたりしてはいけない大切な部分になります。勝手にさわられたら、信頼できる身近な大人に話しましょう。もしくは、SARC東京にお電話ください。
性暴力被害を知った大人は…
▶︎子どものサインを見逃さないようにしましょう。
- ひとりになるのを怖がる
- 急に大人にべたべたするようになった
- 性暴力被害を思い出すため食べ物を口に入れるのを嫌がる
▶︎子どもが性暴力被害にあったことを知ったとき、子どもを叱ったり、自分を責めたりしないようにしましょう。
- どうしてそんな人に付いて行ったんだろう、あんなに注意していたのに
- 母親のわたしの注意が足りなかったのだろうか
- 子どもだからそのうち忘れるだろう
性暴力被害にあった子どもは…
▶︎誰にも話したらダメだと加害者に言われていることが多く、なかなか打ち明けられません。
このような症状が出たり、自分を責めたりすることがあります。
思い出してご飯が食べられない。 夢に出てきて一人で夜寝るのが怖い。 性暴力被害のことを考えると頭が痛くなる。
性器をさわられて気持ち悪かった。恥ずかしい。されたことを話したら家族に怒られる。どうしよう
ついて行った自分が悪かった。逃げればよかった。
身体をさわらせる代わりにお菓子をもらったから、誰にもいえない。
誰にも言うなと言われたから、話してはいけない。自分は悪い子になったんだ。
上に書いたようなことがあったとしても、あなた(子ども)は悪くありません。信頼できる身近な大人か私たちに相談してください。
思春期の子どもが性暴力被害にあうと…
▶︎集中力がなくなったり、怒りが表出することがあります。
▶︎周囲の人に打ち明けることはさらに難しくなります。
特に思春期には、次のようなことが心配されます。
- 裸の写真を送り、脅される
- SNSで連絡して会ったら、ホテルに連れ込まれレイプされる
- JKビジネスに誘われる ・リベンジポルノで元彼氏に脅される
- 加害者が家族、親せき、友達、先輩、SNSで知り合った人、見知らぬ人などと広範囲になってくる
- だまされて、アダルトビデオに強制出演をさせられる
- 妊娠や性感染症の心配が出てくる
周囲の大人がとるべき対応は…
▶︎冷静になって、適切な対応をしましょう。
- まず性暴力被害を受けた子どもに「あなたは悪くないよ」と伝えましょう。
- 話してくれてありがとう。一緒に考えようと話しましょう。
- 先入観を持たずに冷静に何があったかを聞きましょう。無理に聞きださないことが大切です。
- 専門機関や警察、学校、児童相談所などに相談しましょう。家族としてできるサポートをしましょう。
- 必要ならば、児童精神科医、臨床心理士、児童福祉士などのケアを受けましょう。性暴力被害によっては産婦人科の診察を受けましょう。
- すぐに性暴力被害の全部を言わないかもしれません。焦らず、長い目で回復のための手立てを考えましょう。
男性(男児)性暴力被害者への対応
2017年の刑法改正によって「強制性交等罪」が新設され、男性にも適用されるようになりましたが、「男性が性暴力被害にあうはずがない」など社会的偏見が根強く残っており、男性の性暴力被害者にも十分に対応できることが必要です。
男性も打ち明けることが難しい
▶︎下記のような性暴力被害があります。
部活の先輩の性器を口にいれられた
サウナで見知らぬ人に急に下半身をさわられた
知り合いの女性から性暴力被害にあったが、誰も信じてくれないし男のくせにと言われる
学校で同級生などからいじめられ、皆の前でパンツを下ろされ、自慰させられた
酔いつぶれ、家まで介抱してくれた人に襲われた
同性愛者だと思われてしまうのではないか
性暴力被害後の反応
- 「男のくせに」「ちょっとからかわれただけ」など男性だからと被害を軽くみられ、冗談のわからない奴、空気の読めない奴と思われたくない
- 男らしさという社会的規範があることで男性が被害者になるわけがないと思われてしまう。相談した相手に理解してもらえない、信じてもらえない
- 学校、部活などでの性暴力被害を「いじめ」「からかい」と捉えられてきちんと対応してもらえない
- 同性からの性暴力被害の場合、性的指向等を暴露されたり、同性愛者と誤解されたりすることが怖い
- 性的な刺激による身体的な反応(勃起や射精)を恥ずかしく感じたり、同意だったと思われたりするのではないかと不安や恐怖を感じる
打ち明けられたあなたができること
- 相談を受けたら信頼して話してくれたことを受け止め、自分はあなたの味方だと伝えてください。
- 被害者の性別、性的指向を問わず相談された人ができること、してはいけないことは 詳しくはこちら を参照してください。
- 怪我の手当て、性感染症の検査や治療などのからだのケアについては必要に応じて医療機関※への受診を勧めましょう。医師に性暴力被害を受けたことを伝えることで適切な検査につながります。
- 性暴力被害直後、精神的に不安定になり日常生活に支障をきたす場合は早めに適切な精神科への受診をしましょう。
- 警察への相談 詳しくはこちら、弁護士など法的な相談 詳しくはこちら も役に立つかもしれません。
- 相談機関(性暴力救援ダイヤルNaNa等)の情報を提供することで被害者への支援を一緒に考えることができます。まずはあなた自身が自分ひとりでかかえこまずにSARC東京に相談することができます。
症状による診療科
症状 | 医療機関 |
からだの外傷(切り傷、擦り傷、怪我など) | 外科 |
ペニスや肛門や尿道にものを挿入された。 ペニスや睾丸の傷 | 泌尿器科 外科 |
性感染症検査 尿道や肛門から分泌物、皮膚の発疹 | 泌尿器科、感染症科、皮膚科、外科、保健所 |
LGBT(セクシャル・マイノリティ)被害者への対応
被害を受けた方の不安や困惑に十分対応することが必要です。
LGBTとは?
LGBTという言葉は、L(レズビアン:女性の同性愛者)、G(ゲイ:男性の同性愛者)、B(バイセクシャル:両性愛者)、T(トランスジェンダー:生まれたときに割り当てられた性別と異なる性別で生きる人、もしくは異なる性別で生きたいと望む人)、の頭文字を取り作られたもので、セクシュアル・マイノリティの方を表す総称として使われます。また、性的指向、性自認、性表現の観点から、人それぞれがもつ属性を表す概念として、SOGIEと言う言葉も認知されるようになりました。
多様な性のあり方を認め生きていける社会の実現が求められているなか、LGBTの性暴力被害は各国において多く報告されていますが、そのサポート体制があるとは言えない状況です。今こそ、適切なサポートが必要です。まずは被害者が感じる不安を知りましょう。
打ち明けることへの不安
性暴力被害以外の事を話すのは嫌だ
女性から性暴力被害にあったので『被害者』として扱われないのではないか
「異性とやって気持ち良ければ同性愛なんか治る」と無理やり性行為された
同性からの性暴力被害だと警察でまともに取り扱ってくれないのではないか
警察や医療関係者が偏見の目でみるのではないか
性別適合手術をしているからだを興味本位な目で見られる
手術を受けていないため、他の人からトランスジェンダーだと信じてもらえないのではないか
性暴力被害後の負担
- 性暴力被害について話す際に自らの持つ性について開示して話さなくてはならないことの負担が大きい
- 被害者が、加害者、家族友人などの周囲の人や、警察・弁護士・相談員からも、二重三重の苦痛を受けるかもしれない
- 性別適合手術をした状態での、被害後の診療科などが分からない
- アウティング(本人の同意なく性のありようを口外する行為)への不安
打ち明けられたあなたができること
- 被害者は話すこと自体に不安があり、様々な葛藤を抱えながら話をすることが考えられます。相談を受けたら信頼して話してくれたことを受け止めましょう。
- 被害者の性のありように関わらず、相談を受けた側の「これが普通」「こうあるべき」ではなく、被害者が望む支援を受けられるよう、できることを一緒に考えましょう。しては(言っては)いけないことはP8を参照にしてください。
- 本人からの了承が得られていないのに性のありように関して、口外する行為を「アウティング行為」と言います。二次加害になりますので、絶対にやめましょう。
- 怪我の手当て、性感染症の検査や治療などからだのケアについては必要に応じて婦人科、泌尿器科、性病科、外科など医療機関での受診が考えられます。医師に性暴力被害を受けたことを伝えることで適切な検査につながります。
- 相談機関(LGBT支援団体等や性暴力救援ダイヤルNaNa)の情報を提供することで被害者への支援を一緒に考えることができます。まずはあなた自身が相談してみることもできます。
- 警察への相談 詳しくはこちら 、弁護士など法的な相談 詳しくはこちら も役に立つかもしれません。
性暴力は被害にあった人の年齢、立場、性のありようを問わず、また加害者が同性であっても心や身体を傷つける人権侵害です。困ったときはぜひご相談ください。